Vol.4

「働く女性の“B面”」

Vol.4 学び

第5号2009-11-25

仕事や家事以外でしていること、働く女性の“B面”として最も多い答えが寄せられたのが「学び」でした。
英会話かな、趣味のお稽古事かな・・・などと、当初想像していたのとは異なる回答が続々と集まってきたのには少しビックリ。「働く女性の立ち位置」と「現代の労働事情」を象徴するような回答群を紐解いてみましょう。

とにかく「学ぶ人」は多い!

何を学んでいるか、の前に、どこで学んでいるか、を見てみました。
「高野山大学大学院修士課程(通信教育課程)で仏教を勉強中。高野山大学にない科目を補完する形で、放送大学教養学部でも履修中」(ふげんちゃん・会社員(SE)・43歳)
「南山大学人間関係教育研究センターで体験学習ファシリテータートレーニングなど」(fmisa・会社員・41歳)
「神戸大学経営学部で開催している『人と組織の活性化研究会』で学んでいる」(meg・建築設計、監理・49歳)

正科生、科目履修、聴講など、学生としての立場はいろいろなのですが、大学や大学院で学んでいると答えた女性が意外と多かったのです。少子化のあおりを受け、大学に入学する学生数は減ってきています。大学・大学院は、新しい教育消費者として、現役の就労者やリタイア層、主婦層などに焦点を当てるようになりました。最近は、大学や大学院が社会人に門戸を開き、通学しやすい設備や施設、カリキュラムなどを整えています。都心の便利な場所に、サテライトキャンパスが開設されていたりしますし、自宅にいながらパソコンやwebを使って学べる環境が整っています。「いま・未来」会議のメンバーも働きながら大学や大学院で学んでいます。

次に多かったのが「講習会や研修会」、続いて「専門学校」。これらの場所で何を学んでいるのかは、現在の仕事や将来への目標と関係しますので、後でじっくり見てみます。
「語学学校」や「カルチャーセンター」、「師匠」について学ぶ人は比較的少数派でした。
学校に通わなくてもいい語学教材がたくさん出てきているからでしょうか。「いま・未来」会議のメンバーの6割が40代。語学学校やカルチャーセンターで学ぶのは、もう少し若いか、もう少し年輩なのかもしれません。

大学院進学から資格取得まで

では、いよいよ「いま・未来」会議のメンバーが何を学んでいるのか、内容に迫っていきましょう。
さすが現役世代の「いま・未来」会議のメンバー。ずばり「仕事」にかかわる学びが目立ちます。
MBA(経営学修士)取得を目指して勉強中という人も複数います。そのうちの一人は、「夜間と土日に大学院に通っています。なかなか難しいし、学業と実業のギャップの中で、時々へこむんですけれど、知り合った方々からよい刺激を受けています」(スルメ・会社員・49歳)と話します。
このほか、「経営者として足腰を鍛えるために、中小企業診断士資格講座を受講中です」(すず・会社経営・42歳)、「もともとの業務と関連があるため、社会保険労務士の資格取得のために勉強しています」(ふふふ・会社員・34歳)など、現在の仕事に関連し、さらにキャリアアップを図るために専門的な資格取得の勉強を日常に組み込んでいます。

“メンタル系”の学びが増加中

大学院進学や知名度のある資格取得の学習以外で目立ったのは、「カウンセリング」「キャリアコンサルティング」「ファシリテーション」「コーチング」「心理学」「コミュニケーション」「宗教学」といった、人間関係のありようにかかわるメンタル系の学びです。これを挙げる人がずいぶん多いという印象で、公私ともにぶつかったり悩んだりした経験が彼女たちを学びに向かわせたことがわかります。

「自分自身では仕事と育児の両立、会社ではリストラや適応不全の人が増加したことなど、働く人を取り巻く問題に直面することが多く、どうすればみんな生き生きと働けるのだろう、自分には何ができるのだろう、と考え、カウンセリングやキャリアコンサルティグの勉強を開始。とうとう今年、会社を退社し、独立を果たしました」(にのえ・メンタル/キャリアカウンセラーとして独立したばかり・48歳)
「会社での仕事に役立てるため、また、就業支援をしたいとの思いで心理学を学び始めました」(ナカシー・会社社長・43歳)
「新しい上司とうまくコミュニケーションがとれず、うつ病になりかけたことがコミュニケーションを学び始めたきっかけ。自分がいかに傲慢だったかにも気づいたし、家族を含め周りの人間関係が劇的に変化しました。学ぶうちに人との出会いとつながりが広がり、協働的な人間関係を築くことの楽しさと嬉しさを実感。あきらめずに自分から働きかけることで、新しい仕事にもつながり、今はこの生き方が天職だと思っています」(fmisa・会社員・43歳)
「コーチングを学んだことで、自分の考え方や感じ方が変わり、家族や周りの人への接し方、自分の想いの伝え方が変わりました。人生を大きくとらえられるようになった感じ」(あったん・事務職・43歳)
「今年は、心理学の一分野であるNLPの連続講座に通うつもりです。どんな学びも最初は、ワーキングマザーとして働き続けるのに必要な情報を集めていたら、よく似た状況の人が集まるネットワークや団体に出会い、自分が世話になったからできることは返していこうと運営にかかわり、深入りするというパターン。今では、どこからが仕事で、どこからがプライベートか線が引けない状態になってきましたが、活動が深まり、人脈が広がると、情報がむこうからやってくると発見しました」(クロム・企業の人事担当・46歳)

「長期間にわたった親の介護や死を通して喪失感を味わい、同じような悩みを持つ友人たちの話を傾聴するうちに、人には宗教や信仰心など心のよりどころがあった方が生きやすいのだろうかと興味をもったのがきっかけで大学院で科目履修をしています。遍路学や比較宗教学、価値観を異なる者をどう受け入れ、どう対話をしていくかなど興味深く、来年は仏教における遍路とキリスト教における巡礼の比較に着眼して学ぶつもりです」(つる姫・フリーライター・49歳)
「離婚をめぐっていろいろ考えている時に、お釈迦さまの教えのおもしろさにハマリました。それ以来、仏教の勉強をすればするほど奥深く感じ、きちんと体系づけて勉強したいと大学院に入りました。仏教は、宗教というより、人間の心の仕組みを探求する学問のような気がしています。ただし、勉強時間の確保が一番の課題ですね。そのために仕事、家事、よこの会の活動、遊びや休息の時間などをスケジューリングしてやりくりするようになり、それぞれの密度が少し高くなったように思います」(ふげんちゃん・会社員・43歳)
それぞれ動機は異なるのですが、学ぶうちに自分を客観視できるようになり、つらさや苦しさを克服し、知の喜びにめざめ、元気になっている様子です。

ステップアップや転職に役立てたい、と

昇進・昇格や転職など、将来を見据えて学んでいる人もいます。
「社会人になって以来、毎年最低ひとつはプロジェクトマネジメントにかかわる通信教育を受講し続けています。1年以内にDISCトレーナー(教育や人材研修にかかわる資格)を取得するつもりで」(すなお・会社員(人事)・36歳)
「医療に関係している仕事なので情報収集の目的と、将来、医療ボランティアとして活動したいと思い、講習会に参加しています」(わたこさん・養護教諭・53歳)
「家族相談士の勉強は、今後仕事をしていく上で必要と感じたから。パン作りを習っているのは、将来、伊豆で自給自足の生活をしてパン屋さんをオープンするという夢をもっているためです」(ぴび・企業研修講師・46歳)
「子どもたちと一緒に平日の週2回、英語そろばんの教室で学んでいます。将来、そろばんの先生をベースに起業しようと思っている。普通のそろばんの先生ではなく、英語とそろばんの両方を教える“英語そろばん”で差別化するつもり。単位のでかい数字を、英語から日本語に置き換えるのは結構難しいけれど、だいぶん慣れてきて、海外のビジネスシーンでも生かせそう。海外旅行の際のめんどくさいチップの計算も楽々に。IT化の時代でも、そろばんは時代遅れではなく重要だと考えています」(きりん・会社員・40歳)

定番の学びも健在

「いま・未来」会議のメンバーでは今回それほど多くはなかったのですが、語学やお稽古事といった定番の学びについても回答があがりました。
まずは語学。種類別では予想していた通り、「英語・英会話」が多かったのですが、「英語とスピーチ力とリーダーシップスキルを磨く場所として『トーストマスターズクラブ』に入会」(ふらん・会社員・54歳)、「英語能力を転職に利用したいと思っている。スクールに通うことで、英語の能力以外にも、他の社会人や学生と接する機会が持てて、刺激が得られた」(あひる・会社員・29歳)など、単なる教養としてだけでなく、仕事や職業能力と密接した学び方をしています。
「中国語に加えて英会話も」(すなお・会社員(人事)・36歳)、「来年のスペイン旅行に備えてスペイン語を始めた」(つる姫・フリーライター・49歳)など、外国語習得に対して積極的です。

お花やダンス、水泳など、女性が親しみやすいお稽古事やスポーツも定番といえるでしょう。
「自分が日常と離れて楽しめる時間をもちたくて、育児休暇中にフラワーアレンジメントを始め、老後にも生かせたらと思っている」(あったん・事務職・43歳)
「生け花は、幼少からの環境から来るもので、日本人として精神的にリラックスできる」(フューチャー・貿易業・41歳)
「フルタイムの仕事からリタイアした後、楽しみを見つけ、地域での友だちを作ることを目的に、フラダンス、フラワーアレンジメント、料理教室などを始め、最後にフラダンスが残った。運動量としては物足りないが、年長の人生経験豊かなお友達にいろいろ教えてもらうことが多く、おもしろく、楽しい」(きんぎょ・パートタイマー・53歳)
「定年後の“地域デビュー”としてダンス、市民センターでの健康体操、英会話などを始めました」(ほどほど・団体役員・68歳)
「30代でぎっくり腰を二度経験し、ストレス解消と、仕事でもない、家族でもない人との交流が広がることから水泳を続けています」(ぴぴ・企業研修講師・46歳)

女性は男性よりも長い人生を送り、定年後の暮らしも20年から25年続きます。現役時代だけでなく、定年後も含めて生涯を長く見据えながら、健康維持にもつながり、“ほっこり”できる癒し系の学びは根強い人気。自分と趣味や興味の一致する人とは楽しく交流しやすく、仕事や家庭以外以外のネットワークを築くチャンスにもなります。

働く女性の“B面”のうち、学びの機会はこのように多様化し、みな積極的に学ぶ時間を作り出しています。知識を得るインプットだけでなく、それを仕事や人生に積極的にアウトプットしている姿を清々しく、たくましく感じるとともに、学び続けないと生き残れない厳しい時代性も垣間見えます。
男性と女性、正規社員と非正規社員などで、まだまだ教育・研修の機会や費用の問題の格差はあります。景気が冷え込んでいる中でも働き続け、ステップアップし、職業能力を高め、人として成長し、精神的な健康を維持し、長い人生を生き生きと過ごすために、「学び」の効果は高いと言えます。

今回の「いま・未来」会議のメンバー
・年齢;28歳〜77歳(20代4%、30代18%、40代62%、50代11%、60代以上5%)
・雇用形態;正社員45%、フリーランス22%、経営者18%、公務員5%、団体職員1%、パート・アルバイト2%、派遣社員2%、そのほか4%