「女性は働きやすくなった?」
Vol.9 働きやすさへの提案
第4号 2009-2-25
9つのトピックで連載してきました「いま・未来」会議。テーマ「この25年で女性は働きやすくなった?」の連載もいよいよ最終回をむかえました。
これまでのトピックをいくつか振り返ってみます。
Vol.3「女性にとってフェアかどうか」では、「会議メンバーの過半数がフェアでないと感じていること」、そしてそれを分ける大きな要因として「会社の女性に対するスタンスが影響している」、との意見が聞かれました。
Vol.4「働きやすさの実感」では、「働きやすい職場」と「女性が活躍できる職場」との差を整理しました。
Vol.5「出産・子育てに悩む」では、「働きやすくなったと感じられない」、「女性にとってフェアではない」につながる大きな壁が、やはり「出産・子育て」である、ということを再認識しました。
男女雇用機会均等法が1985年に制定されてから24年目の「いま」、これらが「いま・未来」会議メンバーの生の声でした。それではメンバーは「未来」について、どのような意見を持っているのでしょうか?
最終回のトピックは、女性がもっと働きやすくなるための
「働きやすさへの提案」です。
マクロな労働環境から制度、企業の姿勢など、大変広範囲に渡るこのトピック。一人で複数のテーマについて回答した方も多くみられました。
やはり「出産・子育て」 育児休業制度の定着を「いま・未来」の会議メンバーが、今回もっとも関心を寄せたテーマは、やはり「出産・子育て」でした。
「子育て・介護の問題は避けて通れない女性の問題。女性の生き方や家庭生活の仕方を原点に返ってプリミティブに考え直す必要もあり、男女は同権であっても同質ではない」(75歳・幼児教育・40年)
「家事、子育てで女性にかかる負担を減らすシステムが必要だと思うが具体的にはわからない。『夫が完全に負担を分け合うこと』や『会社のサポート』『公的サポート』など」(パーソナルデータ未回答)
このテーマについては、新たな制度を求める意見ではなく、既に施行された育児・介護休業法制度の定着、取得率の向上、企業規模などによる格差是正を求める声が、多くあがりました。
「ある程度のシステムもアイデアも出ていると思います。各自の居る場所にそれがあるかどうかが大きな差を生むと思うので、働きやすい労働環境に対する政府の援助などが 大きくあると、導入も促進されると思います」(53歳・会社員)
「『結婚・出産・育児』など恵まれた環境の女性が多くなっていることは喜ばしいことですが、その恩恵に与ることのできない勤務形態の方も多く格差の広がりを感じます」(64歳・フリーランス・44年)
「大企業、一流企業に比べ、中小企業、地方企業で働く女性には、まだまだ女性が働きやすい環境が整っていない。中小企業や地方企業でも、女性が働きやすい環境になるために、法的支援がほしい」(32歳・会社員・10年)
「出産・育児休暇の取得率の企業別調査と指導」(41歳・マーケティング・19年)
また企業側の意識が問われる意見もありました。
「育休・介護休暇などが査定に影響しないことでしょうか」(パーソナルデータ未回答)
平成17年に発表された、厚生労働省「女性雇用管理基本調査」から育児休業取得者の状況を見てみます。
<出産者又は配偶者が出産した者に占める育児休業取得者の割合を男女別にみると、女性は70.6%と前回(平成14年度64.0%)より6.6%ポイント上昇し、男性は0.56%と前回(同0.33%)と同様取得率は低かった。
事業所規模別の育児休業取得率を女性についてみると規模が大きいほど取得率が高く(500人以上規模で83.2%(同77.2%)、100~499人規模で83.0%(同75.9%)、30~99人規模で69.5%(同64.2%)、5~29人規模で60.2%(同55.6%))、また、全ての規模で上昇した>(調査結果より)
女性の育児休業取得率

政府が進める「次世代育成支援に関する当面の取り組み方針」による目標値、女性80%、男性10%に対して、目標水準に近くなっているようですが、30人未満の企業での普及率の鈍さが目立ちます。
「育児休業取得の向上により女性の就業が定着している一方、女性の正社員雇用については反比例し減少している」という無視することのできない説をとなえる経済学者もいます。
就職氷河期に社会へ旅立った世代は、現在30代前半です。グラフが伸びなやんでいる30人未満の中小企業では、就職氷河期からそれ以降も定期採用を控えてきたケースが少なくないと考えられます。伸びの鈍化、背景の一つには、「育児休業取得」対象者がいないということが想像できます。
また、同じく厚生労働省「女性雇用管理基本調査」で発表された「育児休業取得者があった際の雇用管理状況」をみると、「代替要員の補充を行わず、同じ部門の他の社員で対応した」事業所は47.2%(平成14年度51.7%)、「事業所内の他の部門又は他の事業所から人員を異動させた」事業所は13.4% (同19.4%)としています。このように大企業の場合、「代替要員」問題にも対応しやすいといえます。しかし、組織も体力も小さい中小企業においては、職場内でフォローすることが難しく、派遣社員・非正規社員であっても雇い入れはコスト増であるため、女性労働者がこの制度を利用が難しい状況であるというのが、まだまだ現実であるといわざるをえないでしょう。グラフ伸び悩みの原因と考えられます。
数字上では、女性の育児休業取得率平均が70%となりました。もはやこれは、制度上の問題でもなく、女性という一方の性が頑張れば解決するという次元も通り越し、次のステージに入ったといえるでしょう。メンバーの中からも「出産・育児は、女性だけでなく男性の問題テーマでもある」という意見も大変多くみられました。
「もっと、男性が家庭に入る。男性が育児休暇をとることも、しかり、やはり男性そのものの体験により、価値観が変わっていくものだと考える」(38歳・会社員・16年)
「男性の意識をもっと変えていくこと」(パーソナルデータ未回答)
「男性が働き方を変えるしかない。女性が変わることばかり求められるのはおかしいと思う。今の50代以上の男性には、システムを変える力はないと思う。思考が古すぎる」(43歳・新聞社・19年)
「男性の家庭での家事労働、子育てにさく時間を増やすことを国、会社をあげて義務化、強制化する」(パーソナルデータ未回答)
また、効果を重視した制度導入を提案する意見もありました。
「教育コストを下げること。子どもを育てる費用が高すぎる。ドイツみたいに大学まで無料にならないものか。また、非婚者の子育てへの援助も」(48歳・フリーライター・25年)
男女ともに「働き方」が問われる時代に日本は戦後、高度成長期を走りぬけGDP2位にまで駆けのぼってきました。その間、企業とは、終身雇用、年功序列でタッグを組んできた男たちの運命共同体でした。言うまでもなく、経済を支える側を男性が、子育て・介護を含め生活を支える側を女性が担当し、男女ともに自分の生活を、「二の次」にしてきました。
新しい商品を開発すれば売れる右肩上がりの時代を長く過ごし、長時間労働を是とし、プライベートの時間にも上司のお供をする、それでもそれが人生のレールを確実にする処世術でした。その「スクラムの残骸」からまだ抜けきれないでいるのが、今の40代後半~60代の男性の多くといえるでしょう。
「男性の長時間の働きかたを変えないと、それが標準・職場慣行になって女性は出産しても働き続けることが難しくなる」(67歳・団体非常勤理事・40年)
男性たちは、遅くなっても「会社のスクラム」から帰ってこない。「出産・子育て」期に、ぶちあたる壁は、本来「出産・子育て」は一方の性の問題であってはなりません。しかしこの問題は、長く今も女性側の肩にのしかかり、働き続けることを難しくしてきました。
業種や職種により一概には言えませんが、就職しても会社に利益を大きくもたらすことのできる年齢になる前に辞めざるを得ない女性には、賃金の低い補助的職種を多く与えられました。また子どもの頃から「社会での競争の現実」や「長く働く必要性」を教えられない女性たち自身も、補助的職種を希望する傾向にあったともいえるでしょう。
一方で、男性と同じ機会を得ることができた女性も、出産・子育てによる、わずかな離職期間により、これまでのレールを失い、管理職の道は閉ざされてきました。この負のスパイラルは、長く変わらないM字型就業形態と、女性の平均賃金水準が男性の66.9%、(厚生労働省:男女間の賃金格差レポート)であることが明確に示しています。
しかし、1990年の「1・57ショック」(出生率1.57から)以降、次第に「仕事と私生活の調和」に人々が関心を持つようになってきました。
「いま・未来」会議でも、「出産・子育て」の次に、「働き方」に関する意見が多く出されました。
「仕事の種類や勤務の仕方が多様になること、そのことで賃金格差がないこと。仕事をシェアすることで、もっと働きやすくなるように思います。自宅でできる仕事だったり、勤務時間中に少しでも家へ帰れるとか平日抜け出すことができるだけで、ずいぶん働きやすくなるんではないでしょうか」(38歳・会社員・16年)
「男女共に、よっぽどの理由が無い限り、週40時間以上は働かない。1人の仕事量を増やすのではなく、雇用を増やす」(30歳・会社員・7年)
「給料が減ってもよいので、ワークシェアリングのシステムがあればよいと思う。また、育児・介護という特別な理由がなくても、時短労働を選べるような制度があれば、と思う」(44歳・海外営業・22年)
ワークシェアリングとは、欧州で失業対策として試みられてきた政策で、一人あたりの労働時間を短縮して雇用数を増やそう、というもので、雇用の再分配を図るものです。
前述のメンバーからの、働き方「ワークシェアリング」の意見は、仕事と生活の調和、「ワークライフバランス」の思想をイメージしているものと考えられます。
「家事、子育て、介護、そして日々の暮らしを大切に考える。そして、仕事と両立できる方法を身の回りから考え、まず、試みていけないかなと思います」(47歳・建築設計監理・25年)
「週休3日もしくは6~7時間勤務の正社員ばかりの会社。スタッフに心のゆとりがあっていきいき働けると思う。女性に限らない」(パーソナルデータ未回答)
「男女とも、働き方を見直し、時短を進めるようにすることで、心豊かな生活を送れるようなことができないか」(46歳・フリーライター・22年)
財団法人社会経済性賛成本部「労働生産性の国際比較(2007年版)」によると、日本の単位時間あたりの労働生産性は、OECD加盟30カ国中20位、主要先進7カ国中では13年連続の最下位です。労使ともに「時間」的労働から、「質」的労働へ、急いで意識改革を進めなければならないでしょう。女性たちの求める働き方もここにあるのではないでしょうか。
現在日本が直面する、一方に通常の賃金を得ている者、一方に生活すら危ぶまれる者が存在する状況を、日本の労働法に問題の根幹があると、大阪大学社会経済研究所教授大竹文雄氏はこのように述べています。
<不況がもたらす負を、いま非正規労働者が集中的に負担している。(中略)雇用の二極化がもたらすのは、社会の不安定化であり、企業の競争力の減退である。「正社員の労務費削減を非正規社員削減の必要条件にする」などといった、正社員の既得権を弱めることが、本質的な打開策になる>(WEDGE2号より)
今の非正規雇用切りだけでなく、若年層の貧困率上昇についての危惧でもあります。女性、若年層、非正規雇用の非既得権者と正社員である既得権者との二極化の構造問題が見えてきます。
メンバーからも労働市場をマクロに見た同様の意見があがりました。
「女性だけを働きやすくする施策は、諸刃の剣。男女ともに働きやすくなる施策を考えるべき時代が来ていると思う。90年代以降、日本は労働に関する規制緩和をしすぎた。雇用機会均等法などの法律が整備される以上のスピードで、派遣労働や非正規雇用が増加した。労働規制の復活が、女性のみならず男性にとっても必要。労働市場をマクロな視点で見て、相対的に処遇の高い中高年男性と、正規雇用マーケットに入りきれていない若年層のバランスを取る施策が必要だと思う」(46歳・ダイバーシティ担当・23年)
まだまだ甘い?女性の意識と実力3つ目の柱として、意外に多くの意見が集まったのが、女性自身への問題提起でした。
「最近、派遣社員と面談することが多いのですが、『自分がこの先どのように働いていきたいのか』を聞くと具体的な回答やイメージがない人に出会います。女性自身が『働く』、『仕事をする』ことに対して、真剣に考えることが必要なのではないか、と感じています」(42歳・システムエンジニア)
「システムというよりもこれからは女性自身の意識の持ち方が求められると思います」(49歳・会社員・27年)
「女性がより、体力と、コミュニケーション能力を身につけること。働く=経済活動である、ということを認識し、お金、経済に対するダークなイメージを無くすこと」(41歳・会社役員・20年)
「女性に限らず、自分自身がまずひとり立ちできる実力をつける事が第一歩だと思うので、外に求めるのではなく、今自分に出来る精一杯の努力を周囲の方達のアドバイスを得ながら一歩一歩進んでいくことだと思います」(40歳・商社・18年)
仕事への意識、職業ついての知識を学ぶ環境や機会を望む声も聞かれました。
「企業で働く場合に限って言うと、女性も企業も覚悟が必要だと思います。残念ながら組織人としての成熟度が足りない人が女性に多く見られます。しかしこれは女性だけの責任でもありません。それなりの経験と訓練の場を会社が提供していないという理由があると思います」(43歳・会社員・21年)
「男女ともにずっと働き続けていきなさい、という教育。特に女性に対して、若い時からのフィナンシャルリテラシーをつけさせること」(48歳・フリーライター・25年)
「学生、できれば小学生ぐらいの子どもたちに専門職の魅力を紹介して専門職に就く女性の人数を増やすことが遠回りのようですが有益だと思います。自分の子ども時代を振り返って、どのような仕事があるのかあまりにも無知でした」(パーソナルデータ未回答)
現代求められる能力は「英語力」、「IT力」、「財務力」、そして「コミュニケーション能力」だといわれています。英語が堪能で、ITを使いこなせたら、劇的に活躍の場がひろがることは、容易に想像できるでしょう。「財務力」は、「経理」ではありません。お小遣い帖(P/L、損益計算書)的発想ではなく、資産的発想(B/S、貸借対照表)的発想をつける必要があります。アメリカには、子どものうちからB/S感覚を身につけるためのソフト「クイッケン・フォー・ベイビー」というものまであるようです。
長く働き続けるために、職場から放り出されることのないように、必要な能力を高めることで、職場になくてはならない存在になることも大切でしょう。
「人生設計は自分でやるしかない時代」=「自分で人生をデザインできる時代」相変わらずのM字型就業形態、女性の2人に1人が非正規雇用、低い女性管理職比率、配偶者控除の「103万円」の壁、今もわたしたちが働く環境のこれが現実です。さらに今回の大不況、女性が「働きやすくなる」環境整備は困窮を極めるように一見感じます。しかし、これまでの閉塞感のある時代から、これまでの価値観にしばられることのない新しい時代を迎えたことは確かです。
「仕事のやりがいは余りなかったけれど、家族なんとか幸せに暮らしていけた時代」から「女性も経済的柱の一本として、立たなければ生活が成り立たない時代」になったのかもしれません。ある程度の賃金を得て、生活を楽しむためには、仕事の生産性が求められることは必死です。
「もっと、実力主義になるべき」(48歳・会社員・29年)
これまでに経験したことのない大きなこの経済変動の波の中で、働く人の「性別」ではなく「実力」勝負の時代へ大きくシフトしていくのではないかと予感させます。
もう誰かに期待する時代は終わりました。基本的な制度はあります。男性の意識改革は必要ですが、待っているわけにはいきません。私たちが能動的に変わっていきましょう。
最終回、「働きやすさの提案」で、「いま・未来」会議メンバーは「未来」についてのキーワ-ドとして、「ワークライフバランス」と「学ぶこと」をあげました。
男性も女性も、そして企業も行政も、総力的に「ワークライフバランス」を浸透させていかなければなりません。
当事者、私たち女性もまず一歩を踏み出し、力を付け、自分で働き方をデザインすることです。そして、女性たちが連携する場を持つことによって、浸透へと役立つのではと考えます。
「いま・未来」会議も、そんな女性たちを支える、貴重な情報交換の場でありたいと思います。
●今回の「いま・未来」会議メンバー
年齢:27~76歳(20代 4%、30代 23%、40代 54%、50代 11%、60代以上 8%)
平均勤続年数:20.5年
雇用形態:正社員60% 経営者12%、フリーランス7%、公務員5%、派遣・契約社員3%、パート・アルバイト2%、休職中2%、そのほか9%
(コメントの後のカッコ内は、年齢・職業・勤務年数を表しています)