Vol.8

「女性は働きやすくなった?」

Vol.8 リタイアしたらどうしたい?

第4号 2009-2-11

「リタイア」とはどういうことを意味するのだろうと、改めて辞書をひいてみました。
「[1]引退すること。退職すること②競走・競技で、退場・棄権すること」(大辞泉)とあります。

今回のトピックは、「リタイアしたらどうしたい?」

働く女性たちが第一線から退き、その後どのようにしたいと考えているのかに焦点をあてました。
辞書には、「引退」とは、いつまでに、何歳までに、というようなことは記載されていません。引退の年齢は会社の規程にある定年に従う、あるいは、定年を意識せず自分なりの引退を決める、とそれぞれに、「リタイア」の受け止め方はさまざまです。

何歳でリタイアしたい?年代別に見ていくと・・・


今回、「いま・未来」会議のメンバーからは、次のようなリタイアを想定したデータが出ました。



一番回答が多かったのは、意外にも、「まだリタイアをイメージできてない」という人で、メンバーの約25%を占めます。イメージはできないながらも、何らかの形で一生働き続けるといった回答が多くありました。次に多いのは、一般的な定年制の60歳。3番目は、モチベーションの低下や健康上の理由など、心身に自信がなくなったときにリタイアを想定している人です。

「ずっと先の話」「いいやもう10年もすれば・・・」「いいやもう目の前に・・・」「いやすでに・・・」と、
歳を重ねるごとに近付くであろう、「リタイア到来」に向けて、「いま・未来」会議のメンバーは、どのように受け止めているのか年代別でみてみましょう。

20代
「50歳以降。夫や家族との生活(収入・時間)を考慮の上、早めに引退してもいいかな」(27歳・会社員・4年半)
「金銭的に安定と思えた時。でも、リタイアは考えられない」(28歳・会社員・5年)
30代
「老後の生活資金が貯まればリタイア!」(30歳・会社員・7年)
「生活のために働かなくても良くなればリタイアしたい」(34歳・ ホテルマーケティング・8年)
「まだイメージできなない」(35歳・会社員・10年)
「60歳もしくは55歳」 (35歳・会社員・13年)
「理想は一生現役。自分の仕事を確定するのは今から。けれども、仕事に情熱をもてなくなったらリタイアしたい」(36歳・会社員・15年)
「病に伏した時?リタイアのイメージがない」(39歳・会社員・17年)

若い層では、まだイメージが描けてない人が多く、その一方で、定年60歳と回答した人もいます。20~30年先の事としてぼんやりとしか思えず、それよりもまず生活優先と現実と向き合っている時期のようです。

40代
「倒れるとき、命尽きるときです」(41歳・会社役員・20年)
「体力が底をつきたとき。親の介護で手がふさがってきたとき。55歳か60歳まで働き続けたい」(43歳・休職中)
「一番下の子供が大学生になったら、リタイアもそろそろと考えている。あと10年後くらい」(43歳・会社員・24年)
「50歳でリタイアすると会社でもプライベートでも宣言」(43歳・会社員・21年)
「フリーランスなので、定年を自身で決めることになるが、具体的にイメージはしにくい。仕事を依頼される限り続けたいと思ってはいるが、心身ともに集中力をいつまで保てるかにもよる」(45歳・フリーアナウンサー)
「徐々に趣味に割く時間を増やしていき、足腰がたたなくなるまで何らかの形で働きたい」 (43歳・会社員・21年)
「ペースを変えながら、ずっと仕事ができれば(今漠然と80歳まで)、可能な方法をこれから考えていきたい」(47歳・建築設計監理・25年)
「社風が自分に合わないと思うようになったとき」(48歳・会社員・28年)
「70歳くらい」(49歳・自営業(介護関係)・2年)

この層は若い層と違い、年齢の枠よりも精神的・身体的な理由により、引退を考えているようです。つまり自分の気力と体力を見つめながらというところに、30 代では感じえなかった事がひしひしとわかってきているようです。また、一つの区切りとして子供の大学卒業を機に引退したいと考えている人もあります。親としての責任を果たし、後は自分のことに費やしたいと思うことにつながります。フリーランスの人は、オファーがある限り、その仕事を続けていきたいと思う傾向にあります。そこに、会社で規定された定年と、自分で引退年齢を決められる自由さに大きな違いを感じます。

50歳
「順当に60歳」(50歳・会社員・26年)
「経済的なとこを考えれば働かざるをえないが、55歳が限界かな?」(51歳・会社員・29年)
「60歳までにはリタイアします」(53歳・会社経営・23年)

60歳定年へのカウントダウンが始まった彼女たちは、不安的なコメントはあまりなく、リタイア年齢を言い切っているところに自分の将来への決意のようなものが見えます。

60歳以上
「考えておりません。フリーアナウンサーとしての『朗読、ナレーション、司会など』の仕事、自己表現の研修講師としての仕事は対外的なものなので要望がある限り続けようと思ってます。川柳作家としてはペンを持つことが可能な限り続けることでしょう」(64歳・フリーアナウンサー、研修講師、川柳作家・44 年)
「80歳までには『リタイア』したい」(75歳・幼児教育・40年)

通常の定年に縛られることなく、還暦を過ぎても第一線で活躍。引退年齢はまだ先に考え、40~50代の層で懸念されていた精神的・身体的なことにはまったく触れず、将来の可能性を信じ、前向さを感じます。高度成長時代をたくましく駆け抜けてきた経験からなのでしょうか。

リタイアしてから、したいことは・・・

リタイア後の生活をどのように描いているのでしょうか。
これも年代別で見ていきます。

20代
「何らかの形で、社会とつながっていないと逆に物足りないと思う」(28歳・会社員・5年)
30代
「遠く離れた実家の、家や庭や畑の手入れ。季節を体で感じて生きていきたい」(32歳・会社員・10年)
「あとは社会貢献活動をしたい」(35歳・会社員・13年)
「世界一周旅行をしたい」(34歳、・ホテルマーケティング・8年)
「その後はやはり自由に過ごす」 (36歳・会社員・15年)
「1日数時間だけ働き、自分の時間をもっと増やして趣味や勉強にあてたい、やりたいことは、たぶんいくつになってもあると思う」(37歳・訪問によるリハビリ、マッサージ施術・10年)

庭・畑の手入れ、世界一周に、趣味にと自由に過ごす時間に費やす人もいれば、社会貢献したい人、中には一生働き続けたいという思いもあるようです。

40代
「夫婦元気であれば、ゆっくりと旅行、スポーツを楽しみたい」(43歳・会社員・24年)
「その後は、hand to mouth で生きようと思っています」(43歳・会社員・21年) 
「山のあるところで雑木林に囲まれ、鳥の声をききながら自分の生活のために1日を過ごしたい」(43歳・販促企画・26年)
「その後は、半ボランティアでも構わない(可能なら、週に3日勤務等の条件がいいなあ)ので、マイノリティが働きやすくなる社会作りに貢献したい。今は十分にできないイベント企画や原稿執筆がしたい」(46歳・会社員/ダイバーシティ担当・23年)
「何か社会貢献できるボランティアをしたいと思う」(46歳 ・フリーライター・23年)
「残る人生を2人でゆっくり生きるのが理想・・・今の仕事をやめても、別の仕事(それがアルバイト的なものであっても)を始めるような気もする」(48歳 ・フリーライター・25年)

夫婦で一緒に何か楽しみたい、会社のためでなく、今度は自分のために自然とかかわりのある生活を過ごしたい、などゆっくりとした生活を過ごしていきたいと思う人もいれば、また違った仕事(アルバイト的な)をしたい人、社会貢献できるボランティアにかかわりたいなど、これまでに蓄積されたものを次の社会へと結びつける活動をしたいという人もあります。若い層と違い、だんだんとリタイア後の具体的な思考が見えてきています。

50代
「藍染をする、孫ができていたら子育てを手伝う」(50歳・会社員・26年)
「違う分野の仕事をしてみたい」(52歳・養護教諭・27年)
「自分で何か商売をする」(53歳・会社員・2年)
「その後は自分ひとりでできる小商いをしたいと思います」(53歳・会社経営・23年)

60歳定年の場合にむけて、10年以内に引退が迫ってきている彼女たちには、具体的に何がしたいかが見えています。

60歳以上
「現在と全く違う環境で生活したいという夢があります」(75歳・幼児教育・40年)
70歳を過ぎた後も夢はまだまだ続きます。

「自分だけの時間の過ごし方」とリタイア後にやりたいこととの関係は?

Vol.1でまとめた 「自分だけの時間の過ごし方」の結果とリタイア後のやりたいこととの関連性を探ってみます。
メンバーには読書好きが多いことが分かっていますが、リタイア後にしたいこととして、「私設の絵本や本の文庫を開きたいので、そこに力をいれたい」(パーソナルデータ未回答)、「自分の好きな趣味の世界を広げたい」(パーソナルデータ未回答)という回答がありました。これは、今の自分の時間の過ごし方と、リタイア後の生活に密接にかかわっているようです。
次に多かったのは、「TV・メール・ネットなど情報通信を楽しむこと」。これは、リタイア後の「ゆっくり過ごす」と関連があるのかもしれませんが、具体的には、結びつきにくい気もします。現状の「自分だけの時間の過ごし方」というのは、1日の大半が仕事・育児・家事などで占められている以上、どうしても時間制限がでてきます。しかし、リタイア後の1日の大半の時間は、ほぼ自分が過ごしたい時間に割り当てられることになります。そうすると、今度はリフレッシュではなく、なんらかの形で仕事を続け、社会貢献などボランティア活動したいとした人が多く、約31%ありました。
こうしてみると、現状の余暇とリタイア後の過ごし方は、必ずしも一致しないことがわかりました。

不安感もぬぐえない定年の時


組織の中で働いていれば、60歳定年が多いですが、昨今の経済状況から、そうも言っていられないという声もあります。

「将来に良いイメージは抱けません。リタイアなどと積極的に考えられる立場にないと思っています。子どもの教育費等を考えると蓄えもなく早期リタイアを考える余裕はありません。リタイアは好むと好まざるとにかかわらず60歳定年、もしくは定年65歳制度が導入されていれば、65 歳だと思っています。その後もおそらく時給の低い仕事でもなんでも、体が続く限り働くでしょう。おそらく経済的理由で。寿命は延びていますが退職金も年金も減る一方でしょうし、子どもの重荷にもなりたくないです」(パーソナルデータ未回答)
「細く、長く働き続けることが理想だが、現職では仕事がきついので、ある程度の時点で辞めたい。年金資格がもらえる勤続25年までは現職場で働き、その時点で今の労働環境・生活パターンが変わらない、 あるいは悪化するようであれば、部署異動を願い出る、ないしは退職したい。その後の生活は、人間らしい生活をイメージしている」(44歳・海外営業・22年)
将来の年金不安や労働環境の厳しさでリタイアを考えられない、追い詰められた現状もあるようです。

「60歳でリタイアし、 趣味のハイキングや旅行をして暮らし、65歳で亡くなりたい」(40歳・会社員・18年)と、早くも自分の推定死亡年齢まで考えている人もあります。これは、将来に対しての不安の現れなのか、なにを指すのかはわかりませんが・・・。

長く働く人生のワークライフバランスを


「いま・未来」会議のメンバーの勤続年数は、平均で20.5年。分布は次のグラフのようになっています。



厚生労働省によると、女性労働者(短時間労働者除く)の平均勤続年数(「賃金構造基本統計調査2007年度版」)は、8.7年と、ここ数年ほぼ横ばいですが、勤続10年以上の割合は32.8%(1987年度25.7%)と3人に1人の割合となり、20年以上となると、11.0%(同6.1%)を占めます。

女性が長く働く人生になってきました。背景には、女性の職業の多様化や世帯の経済の担い手とならざるをえない状況もあります。さらには、高齢化も影響しています。年金支給開始年齢の引き上げがささやかれ、年金収入そのものも現役時代の基本給に関係しているため、男性に比べて賃金の少ない女性にとっては、リタイア後の経済状態も決して安穏としたものでもなさそうです。

メンバーの中では、すでに仕事を引退した人がいます。
「仕事のリタイア後も活動専業で、毎日出かけ、スケジュールに追われる生活をしてる。趣味(ダンス、健康体操、英会話、書道)、NPOなどの活動(フェミニストカウンセリング、パワハラ研究会、シニアのネットワークなど)地域デビューもして、知り合いが増えた」(67歳・団体非常勤理事・40年/60歳で定年退職し、嘱託2年)
「サークル活動、読書(目が弱くなったので連続2時間以内)、ショッピング、趣味(三線) 健康のための運動、友人との食事、身内の病気見舞いなどあまり暇がありません」(76歳 ・無職、元会社経営者・48年)
時間を有効に使い、趣味に、運動に、友人との交流、また地域活動にと充実した日々を送っている様子が伝わってきます。

これまでは、男性を対象とした「リタイア生活」が多く語られてきましたが、女性の定年退職者、とくにフルタイムで働く女性は数が少なかったために、あまり話題にもなりませんでした。定年後をどう過ごすかは、現代の働く女性が初めて遭遇する課題であると同時に、定年後を考えることは、今、どう働いていくかとも密接に関係します。
今回、「いま・未来」会議のメンバーには、フルタイムで働き定年を迎えた人、高齢になっても働き続ける人、将来長く働き続けようとしている人、リタイア後はこうしたいと希望を持っている人が目立ち、長い目でワークライフバランスを考えている人が多いことがわかりました。

人生65年と耳にしたのは遠い昔で、長寿国・日本では、生まれてから半分以上を何らかの形で制限された時間を費やし、そして人生のタイムリミットまでの数十年を生き続けなくてはいけません。いくつになっても夢や希望を描きながら人は生きていかなくてはと思います。