「女性は働きやすくなった?」
Vol.7 安定して働けるの?
第4号 2009-1-28
派遣契約の打ち切りなどで仕事と住居を失った人たちを支援するため、東京・日比谷公園で「年越し派遣村」が市民団体によって開かれ、300人以上の失業者らが集まったニュースが年末年始に大きく取り上げられました。
総務省の「労働力調査」(平成20年11月速報)によると、就業者数は6391万人で、前年同月と比べて42万人も減っており、10か月連続の減少でした。完全失業者(季節調整値)は男157万人 女105万人。女性が100万人以上失業している時代です。水面下の数字を含めたらどれだけになることでしょうか。
2009年に入っても景気上昇の兆しすら見られず、相変わらず厳しい状況が続くようです。
今回のトピックは、「安定して働けるの?」です。
「女・いま・未来」のアンケートで、「仕事や職場環境は、これからも安定して働けるところであると考えていますか?」という質問に対し、回答があったメンバーの約3分の2が「いいえ」と答えています。
安定して働けないと危惧する理由として、大きく分けて「社会の情勢」「勤め先の将来性や制度」「年齢や体力面での不安」の3つが挙げられました。
安定して働けない理由の一つは、社会の情勢
メンバーの声を紹介する前に、2008年はどのような社会情勢であったのかを改めて振り返ってみましょう。世界的な金融危機の影響で、日経平均株価の年間下落率は過去最大の42.1%になり、バブル崩壊直後の平成2年(38.7%)を超え、過去最大の下げ幅となりました。年の始めは110円だった円の為替は、年間を通して下がり続け、12月中旬には一時87円まで円高になり、自動車産業を代表とする輸出業に大きな打撃を与えました。
東京商工リサーチによると、2008年11月度の全国企業倒産状況は、倒産件数が前年同月比5.2%増の1,277件、同年の上場企業倒産が戦後最多になりました。
米国発金融危機が世界的な経済危機へと急拡大し、急速な円高・株安が進み、業績の急落を受けて多くの企業が「派遣切り」「内定取消」といった雇用調整を行ったため、失業者が世の中にあふれ出したのです。このニュースを見て、明日はわが身、と感じた人も多いのではないでしょうか。
このような経済危機などが働く私たちに影響を及ぼすという意見が多く聞かれました。
「会社を取り巻く環境が厳しくなっているので、職場の再編を含め、いつどうなるかわからない」(43歳・会社員・22年)
「得意先が次々と東京へ移転しているため、近畿圏の営業所は縮小傾向にある。いつ閉鎖されるか不安に感じている」(32歳・契約社員・10年)
「経済状況が厳しい中で制度も変化しつつあり、これまでと同じ雇用環境がそのまま継続するとは考えられない」(パーソナルデータ未回答)
「一度、合併を経験したが、今までの価値観が180度変わる体験をした。今後も業界再編がささやかれている」(40歳・会社員・18年)
中小企業で勤務する人は、不況の影響をより強く感じているようです。
「現在の日本の経済背景は物価高、経済力低下、事業縮小傾向にあり、雇われ人の場合、経営状況に左右され安定は遠くなるばかり。とくに転職する場合には、年齢が高いと採用されにくいなど難しい壁があると考える。労働者をバックアップするはずの法制度は、大企業だけが取り入れ、中小企業では実質的に機能していない。中小企業は人手が極端に少なく、お金がないから人員確保もできない。会社の経済力の差で労働者の安定度は影響していると思う」(パーソナルデータ未回答)
「中小企業であるため、景気の波を受けやすい」(パーソナルデータ未回答)
「中小企業の経営者は安定という言葉とは無縁です」(41歳・会社役員・20年)
企業の規模によって安定度に差がみられますが、「いま・未来」会議のメンバーの多くは、正規雇用で働く従業員・職員や経営者です。それでも3分の2が「安定して働けるとは思えない」状況にいるのが、現代の大きな特徴のように思えます。安定の代表格であるはずの公務員からでさえ、こんな意見が聞かれました。
「公務職場で働いてきたので、安定していたが、今後は大阪府や他の破綻した自治体の場合のように、先行きは不透明、状況変化の波をかぶることは避けられないと思う」(67歳・団体非常勤理事・40年)
二つめには、働く会社の将来性や制度
「安定して働けない」と答えたメンバーの中には、現在勤めている会社の現況や将来性に対する不安な気持ちを吐露した人がいます。
「今の会社はすでに10年間赤字続きの上、社員の仕事に対する意識がかなり低いので将来が不安」(53歳・会社員)
「零細企業の為に、オーナーの経営手腕に負っている部分が大きい。そのオーナーが超高齢なので、数年先の会社の存続もわからない」(パーソナルデータ未回答)
「オーナー型企業なので、トップが変わればどう転ぶかわからない」(35歳・会社員・13年)
また、それ以外に会社に対する不安材料として、女性が仕事を続けるための制度や環境が整っていないことも挙げられます。
「実際に育児休暇をとるのは難しいし、かといって女性の重役もおらず、 基本的に男性社会であるため」(パーソナルデータ未回答)
「女性の管理職を育てる風潮がないのと、子育てをしながら働ける環境ではない。前例がないため、逆に自分が例を作っていける、働きやすくしていく、というのもあるが、それも少し重荷に感じる」(34歳・ホテルのPR/マーケティング担当・8年)
「ガラスの天井」とよく表現されますが、その名のとおり、男女雇用機会均等法が施行されてから23年が経つにも関わらず、民間企業での係長担当職以上(役員を含む)の女性管理職の割合は未だ10%にも至っていません(厚生労働省「平成18年度女性雇用管理基本調査より」)。制度があっても会社としての取り組みはまだまだ課題が山積みのようです。
また、総務省「就業構造基本調査」によると、2007年の非正規雇用率は35.5%で、女性に限っては55.2%、つまり2人に1人以上はパート・アルバイト・契約・派遣などの非正規雇用で働いています。管理職はおろか、女性は正社員になることすら大きな壁となっているのです。育児期に離職した、一度正規雇用を離れると元には戻りにくい、家庭の事情でパートタイムでしか働けない、再就職の時に年齢が高く、就職が困難だった、景気の調整弁として契約や派遣になりやすい職種にいる・・など事情はいろいろでしょうが、非正規雇用であれば「安定して働く」ことが難しいのは無理もありません。
自身の年齢や体力的な問題も
年齢を重ねるにつれ、仕事を続けられるかどうかが心配、という切実な意見もありました。
「夜勤があり、体力的にもかなりの負担がかかるため、定年まで勤続できるかどうかは分からない」(公務員)
「自分の年齢が高いため。要求されるレベルのことをクリアできていないと思ったら辞めると思う」(53歳・パート・24年)
「不況になれば弱いのが『若くない女』。いつリストラになるかもしれない」(51歳・会社員・29年)
「自分の年齢を考えると出向という形もあり得ると思われる」(49歳・会社員・27年)
老いという、誰も避けて通れない道。それは私たちが働き続けることの足かせとしかならないのでしょうか。一方で、70歳まで働ける企業の実現に向けて、遅ればせながら国も「高齢者雇用継続」に向けて動き始めています。地下鉄の中でも、「能力は年齢に関係ありません」「いきいき元気!」と題した高齢者雇用継続のポスターを見かけるこの頃です。雇用継続される社員の中で男女差がないように願うばかりです。
安定して働ける術とは?
「いま・未来」会議のメンバーの中で、「安定して働けると考えている」と答えた人たちは全体の3分の1と少数派でしたが、それぞれの意見は力強く、ぜひとも見習いたい積極的な姿勢がうかがえました。ではその秘訣とは?
「継続できる仕事を持っていることです」(64歳・フリーランス・44年)
「仮に現在の雇用関係が終わったとしても、今の仕事は、まだ日本社会には必要であり、どこかに仕事はあると考えているので」(46歳・化学メーカーのダイバーシティ担当・23年)
「情報システムという環境は技術進歩はあるにしろ、当面は全く無くなってしまうことはないため、それに関するサポート業務は形を変えながらも継続する仕事だと思うから」(42歳・システムエンジニア)
会社は変わったとしても必要とされる仕事に就いているのでそんなに不安はない、という意見が一番多く集まりました。どんな社会情勢になっても、変わらずに存在するニーズにマッチしたスキルを持っている人が働き続けていける、逆に言うとそのようなニーズを察知しスキルを身につけないと生き残っていけない、そんなメッセージが感じられました。
「モデル会社として登録され、より良い環境を整えるであろうから」(43歳・会社員・24年)
「過去10年ほどの揺り戻しで、在社時間の削減や社員に対しても働きやすくしようという姿勢が見えているから」(パーソナルデータ未回答)
「売上や収益は厳しいですが、会社が変革に前向きで、そもそもリストラはしない方針は変わっておらず、風紀の乱れもなく、雰囲気は和やかでよいので」(41歳・マーケティング・19年)
という恵まれた会社に勤めている人もいました。
そういった会社を上手に選んでいくのも一つのサバイバル方法と言えるでしょう。
自ら変化し続けることで安定を目指す
2008年の8月にアンケートを実施してから今までの3か月の間に、私たちを取り巻く状況は大きく変化しました。もし今アンケートを再度実施したら、「安定して働ける」と答えられる人は果たしてどれくらいいるでしょうか。
100 年に1度の危機といわれるこの経済状況。しかし、「危機」は「チャンス」と表裏一体、と言われます。このような状況だからこそ、今までのあり方を見直し、改善できるところは改善していく、また今までと同じにならないように新しいことを積極的に取り入れていく、そんな変化を生み出す良い機会なのではないでしょうか。また、私たち一人ひとりも自らのスキルアップの必要性をより強く意識し、良い意味での危機感を持ちながら自分を高めていき、社会に必要とされる人材であるように変化をし続けていくこと、それが一番の「安定」となるのかもしれません。