Vol.6

「女性は働きやすくなった?」

Vol.6 心身を病むということ

第4号 2008-12-24

仕事で心身を病むひとが増えている?

「いま・未来」会議メンバーへの調査では、「これまでに心身を病んだ経験がありますか?」に対して、「はい」と答えたのは37%。そのうちほぼ全員が「働き方や職場環境が影響している」と答えています。
また、注目したいのが、「いいえ」と答えた人の中で「職場や仕事の関係で心身を病む人が増えている」と感じている人が、なんと81%もいることです。自分または同僚について、仕事と心身の健康との関係を感じていない人は全体の9%にすぎず、回答者の90%以上が関連性を意識しているという結果になりました。

第6回目のトピックは「心身を病むということ」
働く女性と心身の健康について取り上げます。

「はい」と答えた人からは、「精神的な負担が大きかったため、胃を悪くした」(53歳・会社員)「心療内科にかかったこともあるし、この春に手術したのも1年や2年で悪くなるような病気ではない、と医者にいわれたため、やはり過去10年近くの職場環境とそのストレスが影響していると思われます」(公務員)など。

また、「いいえ」とした人も、周囲で心身を病む人の増加を実感しています。 「最近、心身を病む社員が増えている(癌、白血病、くも膜下出血、うつ病、パニック症候群等)。30代以降が危ないと感じる。皆、大きなストレスを抱えながら、働いている」(44歳・22年)、
「増えていると思う。 実際に主人がそのためにうつになり、休職を繰り返しているので」(パーソナルデータ未回答)
「夫の職場では半年ほど前に同僚が自殺。近い身内や知人が心の病気のため長期にわたり休職している。仕事先で出会う入社1~3年目の若い世代では、仕事に悩み体調を壊したり、退職をするケースをよく耳にする」(45歳・フリーランス)
「最近も直前まで一緒に仕事をしていた仕事先の若い社員が、体を壊したという理由で、担当替えがあった。また、仕事先の人からは社内でとくに心を病む人が増えているという話を聞いている。30代半ばまでの世代が多いように思う」(46歳・フリーランス・23年)
以上からは、想像以上に「働く人と心の病」が深刻である様子がうかがえます。

職場のストレスの最大要因は人間関係

厚生労働省が5年に一度実施している「労働者健康状況調査2007年版」によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレス」が「ある」とする労働者の割合は58.0%(調査対象事業所数13,609、労働者数17,785)となっています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/kenkou07/r1.html

「いま・未来」会議では、「自身が心身を病んだ」原因としては、おのおの、複数の要素を挙げています。「ストレス」とくくった人も多いのですが、具体的な要素の中では、半数近くが「職場の人間関係」を挙げています。これは、回答者に比較的規模の大きな組織に属している人が多いことの影響もありそうです。
1位 職場の人間関係45%
2位 仕事量(過労)27%
3位 家庭との両立27%
4位 職場環境(風土)18%

前出の厚労省調査では、「仕事でのストレス」がある労働者が挙げた具体的なストレスの内容(3つ以内の複数回答)としては、以下のようになっています。
[1]職場の人間関係の問題(38.4%)
[2]仕事の質の問題(34.8%)
[3]仕事の量の問題(30.6%)
[4]会社の将来性(22.7%)
[5]仕事への適性(22.5%)
[6]定年後の問題(21.2%)

男女別では、「職場の人間関係の問題」(男30.4%、女50.5%)は、女が男より高く、「会社の将来性の問題」(男29.4%、女 12.9%)、「昇進、昇給の問題」(男24.9%、女15.6%)では、男が女より高くなっています。就業形態別でみると、一般社員は、「職場の人間関係の問題」(37.7%)、「仕事の質の問題」(36.7%)、「仕事の量の問題」(32.0%)が高く、契約社員は、「雇用の安定性の問題」(36.2%)、「職場の人間関係の問題」(34.4%)、パートタイム労働者は、「職場の人間関係の問題」(45.8%)が高くなっています。以上から、一般的にも「職場の人間関係の問題」は、労働者にとってストレスを生む最大の要素であり、女性は男性より「職場の人間関係」でストレスを感じやすいといえそうです。

メンバーの回答では「上司との関係」を挙げる人が目立ちました。 「直属の上司との関係性に悩んだことが原因」(40歳・商社・18年) 「20歳代では上司との関係、30歳以降では後輩との関係」(パーソナルデータ未回答) 「癖のある上司が異動してきた年に、突然、耳鳴りがはじまり、受診したところ、突発性難聴と診断された。原因不明の病気であるが、当時の上司との関係によるストレスが影響していたと思われる」(43歳・会社員・29年)

職場の人間関係トラブル-セクハラ・パワハラ

女性ならではの人間関係トラブルとして挙げられるのが、セクハラ。最近はパワハラも男女問わず表面化しています。「はっきり職場でのトラブルが原因です。セクハラでした」(51歳・会社員・29年)、「転勤先で、セクシュアル・ハラスメントにあった」(パーソナルデータ未回答)、「職場の女性の上司がパワハラだった」(48歳・会社員・28年)「パワーハラスメントで軽いPTSD状況になったことはある」(67 歳・40年)

いわゆる「セクハラ防止法」は、1999年改正の男女雇用機会均等法で登場しました。セクシュアルハラスメントには、職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(対価型セクハラ)と、性的な言動により女性労働者の就業環境が害されるもの(環境型セクハラ)とがあるとし、事業者に「配慮を義務付ける」というものでした。これに対し、2007年施行の改正では、対象を女性だけでなく「男性にも」拡大、配慮を9つの「措置」にと義務強化されました。

性差ない過重労働と心身への影響

厚労省調査のストレス要因では、男女合わせて3位の「仕事量の問題」が、女性だけの「いま・未来」会議メンバーでは、2位に挙がっているのも要注意です。多くの人が、まず体の不調を訴えています。

「40 歳前は、仕事量に比例して経営運営者から圧力、働き方もムリをし、サービス休日出勤をよくし身が休めていなかった」(パーソナルデータ未回答)、「子宮筋腫は明らかに、若い時に無理して働き、体を顧みず、出産もしなかったからだと思う」(48歳・フリーランス・25年)
「過労での体調不良(長期間の微熱、だるさなど)。スタッフがうつ病になったが過労も原因の一つだった」(37歳・経営者・10年)

過労は、直接、身体に表れる症状として自他ともに注意できるものです。医学的見地からも、時間外・休日労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まると考えられ、労働基準法の労働時間延長の限度45時間は、ここに所以しています。また、近年は、労災認定された自殺に、長時間労働によって、うつなどの精神疾患を発症していたことが多いことから、身体だけでなく、精神面への深刻な影響が注目されています。女性の場合は、これに加え、ホルモンバランスを崩すことでの、婦人科系の疾患なども心配されます。
2007年には労働安全衛生法が改正され、長時間労働により疲労が蓄積した労働者に対して、事業者は医師による面接指導を実施することが義務付けられました。身体だけでなく、心の健康にも大きな影響をおよぼす過労。本人の自己管理の問題だけではなく、周囲の責任や見守りの必要も問われています。

実は仕事より大きい家庭のストレス

具体的なストレス要因として、メンバーの回答では、厚労省調査では特記されていない要素が表れているのも注目すべきところです。それは、「仕事と家庭との両立問題」で、多くが心の病に至っていることも見逃せません。

「自分の能力を超える仕事を処理するために家庭(特に子ども)にしわ寄せしていることへの罪悪感などから、うつ状態になって通院しました」
「子どもが発達障害児であるにも関わらず,仕事が忙しすぎて,子育てに十分時間をかけることができずにいたため,それらのストレスから,適応障害からくるうつ状態との診断を受けた」
「うつをわずらったのは、仕事上の金銭的な悩み+親の死と介護からの開放+夫の病気の3つが重なったからだと思う」

育児・介護・看護など、仕事と家庭の間で深刻に思い悩む姿が見てとれます。どちらも大切で手を抜けないのに、どちらも十分にできない・・・。どちらにも誠実であるがために、その悪循環から次第に自責の念を生み、うつの発症に至るケースが多いようです。

心理学では、「ライフイベントとストレス」という考え方があります。アメリカのホルムズとレイという人が1967年に調査した日常のストレスについての研究結果で、生活での出来事とそのストレス強度を数値化しています。この中から、家庭にかかわるものをいくつか挙げてみると・・・
配偶者の死100/離婚73/近親者の死亡63/結婚50/家族の健康の変化44/妊娠40など、上位に挙がっています。これに対し、仕事上では、失業 48/退職・引退45/仕事上の変化39/配置転換・転勤36・・・。前述でストレスの最大要因だった「上司とのトラブル」は30番目、23とされています。

一つの考え方とはいえ、家庭における問題は、実は仕事よりもストレス強度が高いことがうかがえます。仕事のストレスと家庭のストレスとなる育児・介護など、まだまだ、女性が多くを担う現状のなか、働く女性は、両方を一人で抱えがちになる危険性をはらんでいます。ちなみに、「ライフイベントとストレス」では、年間300点を超えた人は、翌年80%が健康に障害が出るとされています。

私は「強い」から大丈夫!?

「自身が心身を病んだことがある」に「いいえ」と答えた人には、以下のような意見も見受けられます。

「心の持ちようが弱い方が増えていると思います。逆境をばねに乗り越えてやろうという気持ちより、なぜ私は駄目なのか、職場でうまくいかないのかと思い悩む人のほうが主流になってきているように感じます」(パーソナルデータ未回答)
「認知件数は増加している。ただし、どの程度が職場・仕事を原因とするものかはわからない。家庭環境による部分もあるし、 ”打たれ弱い”人が増えているのかもしれない」(43歳・会社員・21年)
「増えていると思います。ただ、私には人間関係に敏感になりすぎているところがあるのでは?と思っています」(32歳・会社員・10年)
「社会環境や人間自体か軟弱になってきているので、今後益々心身を病む人が増加していくと考えている」(75歳・幼児教育・40年)

まだまだ、「心身の病は本人いから大丈夫!」という人が頑張りすぎて無理を続け、結果、心身を病む例も少なくありません。その場合、「自分の問題」「弱い人が増えている」との見方は、一般にあるようです。一方、「私は強は弱くない」と思っていただけに、病んだ自分を許しがたく、さらに症状を悪化しがちです。また、加齢によって、ある意味ストレス耐性はついても、身体の衰えは無視できません。若い頃のように頑張れない自分を、どう受け止めていけるのか?単に「強い弱い」だけでは図れないものがありそうです。

「風邪をひくように誰もがかかる病気だと思っています」(43歳・会社員・ 22年)
「心身の病む人は、増えていて、心身を病んでいる人との仕事はつらいときがよくある」(48歳・会社員・29年)
「増えてきている。特に女性よりは男性に多いように感じる」(パーソナルデータ未回答)
「個人の体質や性質は起因としてあるが、仕事は一日の半分を割くので誘因とならないわけはない。また、年齢とともに体質の影響が大きくなるので、働き方や環境との調整はさらに難しくなる」(47歳・会社員・24年)
「誰でも健康を害するリスクはしょっているわけで、年をとればその確率が高くなる。若い頃は、心身を病むことなど考えもしなかったが、今は、自分の体が衰えたなぁと実感することもあり、病にはなってないけど、危機感は増していると思う」(43歳・会社員・26年)
厚労省調査では、「自分の仕事や職業生活での不安、悩み、ストレスについて相談できる人がいる」とする労働者の割合は89.7%。これは、女(93.1%)の方が男(87.4%)より高く、相談相手として「家族・友人」(女91.2%、男81.4%)がトップに挙げられています。

「増えていると感じた時期もあったが、今は会社の対応も良くなってきており、そんなには感じない」(43歳・会社員・24年)
「以前、強烈な性格のメンバーが居て、その人のために心身を病みそうになった人が数人いました。メンバー交代後は平和な環境になり、人のパワーは恐ろしいものだと感じました。職場で、上司などが各人と1対1の対話をして、状況をつかみ、早めに必要な対応をすることが大切だと痛感しています」(42歳・会社員)

人と関わらざるを得ない仕事。 ストレスを感じるのも人間関係や周囲の対応なら、ストレスを緩和するのも人間関係や周囲の支えなのだといえそうです。