「女性は働きやすくなった?」
Vol.5 出産・子育てに悩む
第4号 2008--12-10
女性が働き続ける中で、一つの”壁”としてあるのが、「出産・子育て」です。
これを物語る、いくつかの指標があります。
各年代ごとに仕事を持つ女性の割合を知る、「年齢区分別女性の就業形態の変化」(総務省統計局『就業構造基本調査』)があります。そのグラフでは、出産を前後して30代前半に女性が仕事から離れてしまうことによってできる、”M字カーブ”が表れます。日本独特のカーブは今も消えていません。

(参考資料は、配偶者と子どもの有無の割合も含めたデータを採用)
また、出産前後の女性の就業状況の調査した、「子どもの出生年別、第1子出産前後の就業経歴の構成」でも、第1子出産前後に出産退職する女性が割合がわかります。その割合は、4割前後とここ20年変わっていません。

(両データはいずれも「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国内分析報告書/平成18年9月」から)
育児支援の制度は整えられつつありますが、女性が働き続ける環境として大きな成果は表れていないようです。
第5回目の今回のトピックは、
「出産・子育てに悩む」です。
「いま・未来」会議のメンバーに、「仕事と子育ての両立の難しさを感じ、仕事を辞めようと思い悩んだことがある、もしくは、子作り(出産時期)を先延ばしにしたことがありますか」との問いかけをし、働き続ける中で、出産や子育てのその時をどのようにしてとらえ、考えたのか、あるいは考えているのか、数字の中にある、思いを見ていきます。
「働きやすくなったと感じられない」「フェアではない」につながる、出産・子育て「仕事と子育ての両立の難しさを感じ、仕事を辞めようと思い悩んだことがある、もしくは、子作り(出産時期)を先延ばしにしたことがありますか」との質問に、「はい」が32%。「いいえ」39%、「どちらでもない」29%とほぼ均等に分かれました。

今回「はい」と答えた人には、他のアンケートの回答とを組み合わせて傾向をみる、クロス集計で一つの傾向があります。
前回のトピックでもあった、「『働きやすくなった』と感じていますか」については、メンバー全体では、過半数58%が「はい」としました。しかし、今回の質問で「はい」と答えた人では、47%にとどまっています。
また、「仕事の内容や進め方、昇進などで女性であるために『フェアではない』と感じたことがありますか」について、全体の54%が「はい」だったのに対し、ここでも違いがあり、やや高い数字となる63%が「はい」と答えています。
「働きやすくなったと感じられない」「フェアではない」という働く現場での実感と、「出産・子育てに悩むこと」は関連していることがわかります。
「生むのか」そして、「いつ生むのか」。出産のタイミング「仕事と子育ての両立の難しさを感じ、仕事を辞めようと思い悩んだことがある、もしくは、子作り(出産時期)を先延ばしにしたことがありますか」との問いに、「はい」と答えた人の中から、その場面ごとに分けて聞いてみました。
まずは、出産です。
「パートナーが家事に協力的でなかったため、仕事を続けながら子どもを持つと自分だけ大変になってしまうと感じた」(42歳・会社員)
「結婚自体も仕事の障害になると思った時期もある。今もそうかどうかはわからない」(38歳・会社員・16年)
「子作りの選択を考えたことはあったが、結果的には仕事を選択したのかも・・・です」(47歳・建築設計監理・25年)
と出産・子どもを持つことそのものを考えたという人がいます。
出産のタイミングについても多くありました。
「30代前半までは、仕事の第一線を退くと『負けになる』と思っていたし、同僚男性からのねたみをはねつけ、わたしを引き上げてくれた上司が彼らから『それ見たことか』と思われてはいけない」と思っていた」(41歳・会社員・19年)
「仕事をすると男に見られますので、『いっそ辞めるしか子作りの環境はそろわないかなあ』と悩んだことはあります」(41歳・会社役員・20年)
「20代から30代前半にかけて、仕事が俄然おもしろく、子作りを具体的に進めなかった。頭の中ではどうするんだ、いつ生むんだと常に葛藤があった。38 歳頃、子宮筋腫を治して、出産に臨もうかと思ったが、ちょうど親の介護と重なったこと、不妊治療への抵抗感から出産はあきらめてしまった。自分が選択した生き方なので悔いはないが、子どもを生まなかった『負い目』のようなものはある」(48歳・フリーライター・25年)
「どうしても出産・育児については、女性は一時期あきらめざるをおえないことが多い。また、後々のハンディにもなりうる。長い目で見れば働き方を変えることは、プラスになったとは思えるが、当時は、まだまだ働きたかったのでくやしい思いを持っていた。でも、今となっては、あきらめずにもがきながら続けてきたことが、自身に大きな力となり、部下や後輩から頼りにされるゆえんとなっていいる」(47歳・会社員・24年)
自分がキャリアを重ねる時期とどう折り合いをつけるのかは、大きなポイントのようです。
また、職場環境や仕事量もタイミングを図る要因になっています。
「妊娠して体調を壊しても仕事を変わってもらえる保証がない。半年、1年半先に予定が入っていることも多いので子作りをためらった」(45歳・フリーランス)
「職場の規模や環境からみて、先輩となる人がいない、応援してもらえる上司もいなかったので、子作り(出産時期)に不安を感じ先に延ばそうと思った。迷っているうちにいい年齢になり、あきらめ、結局出産しなかった。働きながら出産するためには、かなりのエネルギーが必要と思う。私にはその体力がないと感じたのもその理由の一つ」(パーソナルデータ未回答)
「あまりにも残業が多かったこと」が悩みだったという女性は、「結婚して数年後、どちらも残業が多くそのためによくケンカもしました。仕事か家庭かでかなり悩みましたが、そろそろ子どもが欲しかったこともあり、残業が少ない職に転職しました」(パーソナルデータ未回答)と、働き方を変えています。
「一人目の育児休職明けにひきとってもらった部署の上司に迷惑をかけたくないと考えたから」(パーソナルデータ未回答)
「入社5年目の研修に同期の仲間たちと一緒に行きたかったから、先延ばししたことがある」(38歳・会社員・16年)
と具体的に出産時期をコントロールした人もいます。
子育ての最大の悩みは、時間が足りないこと続いては、子育ての場面です。
「仕事は辞めようかと悩んでいます。時期にもよりますが、連日残業をしたり、土日にも出勤を余儀なくされたり、持ち帰って子どもが寝てから仕事したりして、疲れ切ってくると、家の中も荒れ放題。子どもの接し方も悪くなり、何のために仕事をしているのだろうかと分からなくなってきます。一方で、こんなに安定し、かつハードワークでない私がそんなことを言うなんて、甘えているんだ、とか、こんなことで負けたら男女の経済格差拡大に寄与してしまって悔しい。それより何より、まだ小さい二人の教育費はどうするんだ、などと考えて辞めるに辞められずにいるんですが」(公務員)
「二人目を妊娠したとき、上の子の保育園のお迎えの時間に間に合わず、走ることもできないので、限界と感じた」(43歳・会社員・24年)
「(同じ職場の)アルバイトの数が減り、その時間帯も働くことになったため、帰宅が夜中を過ぎることが3ヵ月も続きましたその間、娘が肺炎で入院し、2週間休まざるをえなくなりました。家、職場どちらにも無責任にもみえましたし、アルバイトからの風当たりも強くなりました」(43歳・会社員・20年)
と悩みの多くは、子育てに対して時間が足りないことでした。
杓子定規に進まない子育てに、柔軟に対応できる職場のシステムや家族の協力も得られないことが、働く女性たちを孤軍奮闘させ、追いつめているようです。
「日本企業の一般的な働き方は、長時間労働を美徳とする意識が強く、子どもと過ごす時間が必要な時期は時間のやりくりがつらかった。とくに子どもが小学校に入ったばかりのころが、精神的に一番きつかった」(46歳・会社員/ダイバーシティ担当・23年)
と指摘する声があるように、長時間労働の影響があるようです。
「子ども・家族・まわりの社員に負担がかかってしまう、と思うと、そこまでして私は働く意義はあるのか!?と悶々とする」(30歳・会社員・7年)
「日も暮れて、友だちがみんな帰った後の公園で小学校2年生だった子どもがたった一人でランドセルをお尻に敷いて座りながら、紙飛行機を飛ばしている後ろ姿を見たときは切なかった。責任ある仕事をしているという自負と、家族を犠牲にしているかも知れないと思った気持ちが入り乱れた瞬間だった。その後も子どもに関して、一人っ子で寂しい思いをさせているかも知れないと、何度も辞めたいと思った瞬間があったが、辞めるためには最低1年間の引き継ぎが必要と考えていたので、すぐには実行に移せなかった。(その後)辞めたときの理由は子どもではありませんでした。子どもには、『今辞められても僕には何のメリットもない』とはっきり言われました」(53歳・正規社員からパート)
ワーキングマザーの「子どもを犠牲にしているのでは」という自責がいつの年代にも変わらずあることも、寂しく思われます。
「上司の理解」「家族・職場の環境が整っている」と悩むことはなし次は、「仕事と子育ての両立の難しさを感じ、仕事を辞めようと思い悩んだことがある、もしくは、子作り(出産時期)を先延ばしにしたことがありますか」との問いに、「いいえ」と答えた人たちの理由を見ていきます。
「上司の理解があり、結婚報告や妊娠報告をしたときもすごく喜んでくれた。会社の制度も大切だが、何より、一緒に仕事をする上司の理解が一番だと思う」(38歳・会社員・16年)
「仕事を辞めようと思ったことは一度もありません。ずっと仕事をしていた母に子育てを助けてもらえたことと、そもそもずっと働くのがあたりまえ、と思って育ったからでしょう」(パーソナルデータ未回答)
「仕事も子育ても私にとって大切なものなので、家族の協力と職場のメンバーの理解があり、辞めようと悩んだことはない」(43歳・会社員・22年)
と職場、家族とも恵まれていると感じられる環境にある人の一方で、
「出産・育児をクリアーして後、職をもったため」(75歳・幼児教育・40年)
と自身の働く環境を整えた人もいます。
「生活のために辞める選択肢はなかった」(49歳・自営業)
「仕事以外に収入は望めない生活だったから」(53歳・会社員)
と生活を支えるために働き続けることを第一として、仕事を辞めようと悩まなかったとする人もいます。
これから迎えるその時に、前向きもあれば、不安も見え隠れここまでは、出産・子育てのその時を振り返ったメンバーの意見を紹介してきました。
その時をこれから迎える人の場合は、どうでしょう。
「今の仕事量ならば両立していける自信がある」(32歳・会社員・10年)
「子作りのタイミングは自分で納得して考えている。仕事とのタイミングももちろん考えるが、欲しいときに仕事があしかせになっているとはまだ感じていない」(34歳・ホテルのPR/マーケティング担当・8年)
「出産の時期は仕事のおもしろさと区切りを考え、先延ばしにしてきたが、まわりに両立している先輩がいるので、悩んだりしたことはない。ただ復帰後、自分が両立できるかは不安を感じることはある」(休職中)。
とこれらは、「いいえ」と答えた人たちです。
「はい」と答えた人は、その理由を
「仕事が家庭の両立はこれからくるものだが、現実的に難しそう。突発的な仕事が多く、また出張が多い。自分で時間調整するのが難しい」(27歳・会社員・4年)
としています。
前向きに現状をとらえる人、その中に不安が見え隠れする人もいます。
実は、悩んだことのない「いいえ」は少数派今回のテーマでは、出産・子育てその時の場面について、聞いてきました。「いいえ」「どちらもない」との答えには、メンバー全体の約30%を占める、未婚・シングルのメンバーが含まれています。
それを前提にすると、振り返った時、またこれから迎えるにあたって、「いいえ」と答えた意見は、実は、少数派です。
これまでに紹介していない、意見を細かく見ていくと、「どちらでもない」という中には、
「両立は無理だと思ったので、子どもを作らなかった」(46歳・会社員・21年)
「仕事を辞めようと悩んだことはないが、連れ合いの病気・入院が続いたとき、娘の不安を考えて、仕事量を減らしたことはある」(64歳・フリーアナウンサー、各種研修講師、川柳作家・44年)
「独身のままなので。結婚しなかったのは、明らかに『もっと量的に仕事がしたい』と思っていたからです。若かったからな・・・仕事にもゆとりがなかったし」(43歳・販促企画・26年)
というものがあります。
「仕事を辞めようと悩んだことがあるか」の問いかけでしたので、悩む度合いによって、「はい」「いいえ」「どちらでもない」とに分けられたのもの、その理由から推し量ると、仕事を続ける上で出産・子育て、あるいは結婚の時に、女性たちは考え、選択していることに変わりはないようです。
冒頭、女性が働き続ける中で、一つの壁としてあるのが、「出産・子育て」としました。
逆に、女性が働き続け、それぞれのライフステージを送るには、仕事が壁となります。双方が壁とならず自然と両立できることが望ましいのは、言うまでもありません。
仕事の、とくに物理的な壁となる、時間(長時間労働)だけでも突き崩せたらと感じました。